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<受験生オススメ本>日本最古のビジネス書?実用のための源氏物語ー読書感想「源氏物語の教え」 (大塚ひかり)

僕が受験生のとき、源氏物語がとても苦手だった。

日本の文学史の中で最高傑作とも評される源氏物語だけれども、俺にとっては試験の高得点を阻む、クソ古典でしかなかった。

実際、2014年のセンター国語の試験で源氏物語が出題され、多くの受験生が青ざめたと思うが、僕もその1人だ。

それ以降、源氏物語は目にするだけで怒りが湧いてくるシロモノになってしまった。

しかしそんな俺の源氏物語に対する印象をガラリと変えてくれた本がある。

それが大塚ひかりさん源氏物語の教え」だ。

 

 

実用書としての源氏物語

作者いわく、源氏物語が昔から読み継がれていたのは、文学作品として優れていただけではなく、当時の女性にとっての実用書としての面があったからと指摘する。

優れた古典は優れたエンタテイメントであると同時に、実用書である。 (中略)しかし最も長い時代にわたり、多くの人々にとって実用的であったということでいえば、平安時代に書かれた「源氏物語」の右に出る古典はあるまい。

本書に書かれているように、「源氏物語」が書かれた平安時代は女性の地位がとても低くいものであった。

たとえ貴族であったとしても、親の地位が低ければ男性貴族たちから下に見られるのは当たり前であり、それどころか人間扱いすらされないこともあった。

その女性の地位が低い時代で、実際に紫式部藤原北家の名門に生まれた上流貴族でありながら、夫の死により落ちぶれるなどの辛い思いをした。

そのため紫式部は「源氏物語」を通して、光源氏と関係する地位や性格、容姿も異なる様々な女性を登場させる。

そして彼女らがどう生き、どのような結果になったのかを描写することで、当時のストレスフルな時代をどうやって生き抜き、どうすれば少しでも幸福感を得られるのかを書いているのだ。

 

源氏物語に対する見方が激変する

本書には「〇ックス」や「レ〇プ」などのエグい言葉が出てくる。

どこか幻想的で雅な印象のある「源氏物語」には合わない生々しさだ。

しかし実際に光源氏が紫の上やその他の女性達にしたことは、このようなエグい行為にほかならず、また息子である薫の浮舟に対する対応はもはやモラハラそのものである。

本書で紹介されている男性達はこのような行為を当然のようにする人たちであり、やはりそれは「源氏物語」の書かれた時代に、実際に多くの男性貴族たちがおなじようなことをしていたからなのだろう。

またそれ以外にも女性同士の過酷な争い、

このような生々しい現実を知ることで、より「源氏物語」がグッと身近な物語に感じることができた。

 

まとめ

源氏物語」は想像以上に過酷な物語である。

そこで語られる人々、特に光源氏に愛された女性達の姿を通して、現在にも通じる幸せを感じる生き方はどのようなものかを本書は教えてくれる。

また、それぞれの登場人物の境遇や当時の風習など細かいことも説明してくれるので、受験生で源氏物語に抵抗がある人はぜひ読んでもらいたい。