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夏目漱石から今を生きる人へのアドバイス 読書感想「私の個人主義」

 だれだって自分の生き方に迷ってしまう。たとえ夏目漱石であろうと。

 

本著は大正三年十一月二十五日、官立学校の学習院で行われた夏目漱石の講演を記録したものだ。

気になるのは、そのタイトルにもある「個人主義」という言葉

個人主義と聞くと、自分の思うがままに行動し、その結果、周りに迷惑をかけても知らんフリ、といったどこか身勝手な感じがする。

人に勧めるにはどこか変で、ふつうならありえない。

しかし、この個人主義。それは夏目漱石の人生のおける大切な思想であり、今を生きる僕たちにとっても、必要とされている主義なのだ。

 

私の個人主義

私の個人主義

 

 

 自分本位という生き方

夏目漱石が英語教師として様々な学校で教えていたのは有名な事実だが、実は漱石にとって、教師という職業は本当は嫌なことだったらしい。

何故なら、教師になることは、他人の勧めによって決められた仕事であり、自分の本当にやりたいことではなかったからだ。 

 何だか不愉快な煮え切らない漠然たるものが、至る所に潜んでいるようで堪らないのです。しかも一方では自分の職業としている教師というものに少しも興味を持ちえないのです。

 

また夏目漱石は英文学を専攻しており、日本における英文学の研究を進めるという思いのもと、イギリスに留学することになる。しかし、そこでの授業は彼が想像とは違い、英文学に関する知識を詰め込まれるだけの退屈な授業だった。

イギリスで自分が望んだような勉強ができず、悩みに悩んだ彼は1つの決意をする。

 

それは、他人に頼らず、自分の力だけで日本における英文学という考えを一から作り上げるという決意である。

この時私は始めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるよりほかに、私を救う途はないのだと悟ったのです。

 

この時、他人に人生を決めてもらう他人本位の生き方ではなく、夏目漱石は自分の力で人生を生きる、つまり自分本位の生き方を見つけることになる。

私はこの自己本位という言葉を自分の手ににぎってから大変強くなりました。彼ら何物ぞやと気概が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図してくれたものは実にこの自己本位の四字なのであります。

 夏目漱石はこの自分本位の生き方を「個人主義」の生き方という。

この個人主義とは社会において、自分の個性を十分に発揮するために必要な主義なのだ。

 

終わりに

今の時代は多くの生き方がある。しかしその中には自分の個性を発揮できる道も必ずあるだろう。

しかし、自分がそうだったように、僕たちはどうしても安全志向で人生を選んでしまう。たとえ自分に合う道であろうと、それが一般的な人生ではなかった場合に直面してしまうであろう苦労や痛みを思うと、どうしても選びきれない。

しかし、もし自分の人生を探そうとしなければ、常に胸には消えることのないモヤモヤが存在してしまう。

だから僕たちには必要なのだ。この「個人主義」という生き方が。