医学部合格という夢が叶わなくても人生は終わらないという話
医学部合格のため勉強している時、よく思っていた。
「医学部に合格しなければ、自分の人生に意味はない。終わったも同然」と。
自分の性格上、追い込まれなければ勉強をしないという理由から言い聞かせていたのもあったが、当時の僕は本気でそう思っていたのだ。
その思いは浪人を重ねて、逃げ道が1つづつ消えていくように感じるにつれて、強くなっていた。
最後には「合格しなければ自分の人生に意味はない。合格できないのであれば死んだほうがいいんじゃないか」と考えるほどだった。
「合格できないのであれば、死ぬ」
そう思いつづけて、家と塾とを往復する毎日を過ごしていた。
しかし、ある日突然、その思いに終わりがきてしまう。
合格するという決意の終わり
受験がいよいよ現実味を帯び、肌寒くなってきた10月。それは本当に突然だった。
いつものように朝6時に起き、その後1時間の勉強と、朝食、朝風呂を終えて、いざ塾に行こうとしたとき、突然思った。
「あ、もうこれ以上勉強するのは無理だ。」
まるで穴をあけた風船のように、僕の中から医学部に合格するという決意が、音を立てて漏れ出しているようだった。
もう医学部だとか、センター試験だとか、勉強だとかいった受験に関する全てのモノが、どうでもいいことのように感じ、机に座っても勉強に集中できず、完全な無気力状態になってしまった。
そして、その日から、自分から勉強することができなくなった。
そして大学へ
医学部に行くのを諦めた僕は、これ以上の勉強をしたくないため、今の実力で確実に入れる学部へと入学した。
やっと受験を終えてほっとしていたのは事実だが、それ以上に長い間、医学部合格のために頑張っていたのに、結局入ることができなかった自分に対しての失望を感じながらの大学入学だった。
思い浮かぶのは「医学部に合格しなければ、自分の人生に意味はない」という言葉。
合格通知をもらい、実際に大学に入学するまでの準備で忙しい日々の中で、時々その言葉を思い出し、今後の自分の人生は一体どうなるんだろうと考えた。
周りを見渡しても、6年も浪人した人はあまりいない。
普通の人達と比べて圧倒的に出遅れたと感じながら大学へ入学。
そうして始まった大学生活。僕はすぐにこう思った。
「すごく、楽しいじゃないか。」
そう。とても楽しいと感じたのだ。
時間とお金の許せる範囲であればなんだってできる自由さ。
大好きなゲームをやっても罪悪感を感じることもないし、1日中ひたすら本を読んでもかまわない。友人と夜に飲みにいくことさえできる。
浪人の時には経験することのなかった、楽しみが大学にはあった。
そして大学で勉強することで、こう思えるようにもなった
「医学部に入れなかったからって、人生が終わるわけじゃなかった」
人生は終わらない
僕はこの6年間の浪人で、夢だった医学部に入ることはできなかった。
しかし多くのことを学べたと思う。
そのうちの1つが「夢をかなえられなくても、人生が終わることはない」ということだ。
確かに大学受験は人生の中でも大きなイベントだ。合格か不合格かで今後の人生は大きく変わるだろう。
でも、「変わる」のであって「終わる」わけではないのだ。
夢に向かって努力し、それでもなお叶えられなかった時、僕のように失望感、無力感、そして自分の人生の無意味さを感じるかもしれない。
それでも、その努力が無駄になることはないし、人生が無意味になることもない。
1つの夢が叶えられないから無意味になるほど、人生は単純じゃない。
最後に
僕は現在、医学部ではないけれど、別の分野で人の健康に関わる学部で勉強している。
浪人していたときには考えもしなかった生活だが、とても毎日が楽しい。
医学部合格に向けて勉強を頑張っている人のなかには、もし合格できなければ、人生が終わるとか、人生に意味がないとか思っている人もいるかもしれない。
でも、それは間違いだ。
確かに、大学受験は人生において重要なイベントだ。でもそれで全てが決まらない。
合格でも不合格でも、その後のあなたの選択が、人生を決めるんだ。